性行為に興奮出来ない人間が風俗に行くとどうなるのか?(本編)
神奈川県は川崎市。
その遠くまで続く青空と対極のような曇った表情をした男が京急川崎駅から出てくる。
174㎝64㎏のその男は喫煙所の壁にもたれかかりながら俯いていた。
彼、他でもない僕は緊張に押しつぶされていた。
風俗という未知の領域に踏み込むことに決め勢いで予約をしたところまではよかったが、間違いなく人生で一番緊張していたし、恐れをなしていた。
嬢との1vs1で80分、僕はどうなってしまうのか。
普段は何でもない川崎の駅を降りるだけで僕の心臓のBPMは170前後まで加速していた。
早く着きすぎてしまったこともあり、平静を取り戻すべく煙草を吸いまくったがどうにもおさまらない。柄にもなくカフェでホットのソイラテを飲んだが、暖かいもので気持ちが落ち着くという風説は大嘘だと感じながら時間をつぶした。
1時間前の確認電話をかけてからはもうひたすら落ち着きがなくなり、店の近隣を歩き続けた。さながら回遊魚である。
多摩川と競馬場と川崎駅の真ん中あたりの街、堀之内町が今回の目的地だ。
いわゆるソープ街的な場所は横浜の福富町近辺であれば歩いたことはあるが、使用者側の目線ではなかったので普段は「あ〜あるねそういう店」的な視点で通り過ぎる。しかし今回は明確な目的を持ってソープ街を歩いている。新鮮だったと同時に不安で仕方なかった。
予約の25分くらい前に入店をし支払いを済ませた。一気に3万円が消失したことが全く気にならないレベルで不安に押しつぶされていた僕は番号札を受け取り奥へと足を進めた。風俗店の場所柄暗いところが多いようなイメージを勝手にもっていたが店内は明るく、比較的広く場所がとられている印象だった。
店内は禁煙との表示を見つけ、終わるまでの禁煙を余儀なくされた。今僕の五感で感じうるものの中で既知のものは無い。吸い慣れたロングピースがこの時ほど恋しくなったことはない。
待合室はカウンターのようになっており、壁向きに椅子が置かれカウンター上に漫画が置いてあった。当然漫画を読むような心の余裕はなく、ひたすら壁を見つめていた。よほど顔色が悪かったのか、店員が何回か僕の顔を覗き込んでいた。
カウンターの上に爪切りが置いてあったので使った。奇しくも実家とまったく同じ爪切りが置いてあり、懐かしさと少しの安心が僕の心へ流れ込んだ。
早く来すぎたこともあり結構待った。自分の番号が呼ばれるまで僕は爪を切るか壁を見つめるかの2択を余儀なくされ、さながら執行を待つ罪人のような心持ちで呼び出しを待った。
しばらくすると僕の番号が呼ばれ、店員から注意事項の説明を受けた。店員から3階に上がるよう促され、僕は階段を1人で上がることになる。
処刑台に上がる囚人はきっとこのような心持ちで階段を上がったのだろうか。
自らの意思で階段を上がる僕は枷がついているかの如く重い足取りで階段を登る。
階段を上りながら僕は思った。何故僕はこんな重い気持ちでセックス屋さんに来ているのか。せっかくなら”舞え”よと。2階を通り過ぎる頃には、”一般童貞が筆おろしをされに来た”の顔を作り上げ、覚悟を決め大地を踏みしめた。
ENCOUNT
3階の踊り場に人影が見える。予約した嬢だ。
普段通り俯きながら歩いている僕は上からの声に気づく。
きっとこの瞬間が博打のリザルト画面だ。恐る恐る顔を上げた。
おお、写真通りだ。好みか好みでないかの2択で言うのであれば、間違いなく前者。僕は女優にも声優にも詳しくないので、嬢の顔を的確に例えることはできないし、前段述べた通り好みのタイプが分からないので何とも言えないがとりあえず当たりを引いた方の部類であることは間違いないと思う。歳も見た感じ同い年位の人だったので申し分はないのかな、と分からないながらに思った。
嬢「こんにちは~」
僕「こんにちは…」
嬢が手を広げる。すしざんまいのポーズではなく挨拶のハグのようだ。留学していたころ挨拶でハグされることはあったが、同年代同士ではほとんどなかったことを思い出し恐る恐る抱きついた。
嬢「めっちゃ震えてるね」
僕「あぅ…緊張してて…すみません…」
情けない声を出していると嬢に手を繋がれ部屋へと案内された。
僕「ヤバいっすね、人の手がこんなに柔らかいとは…」
嬢「えへへ」
キモすぎか?普通にめちゃくちゃオドオドしてた。
言葉にめちゃくちゃ詰まる。いかにもウブな反応をしていたのではないだろうか。
沈黙が怖くて仕方ないタイプなので、何か言葉を発さないとと滅茶苦茶焦っていた。前述の通り多分世間一般からしたら可愛い方の顔だと思うので、とりあえず可愛いと言っておけばその後不穏な空気になることもないだろうと思い褒め倒した。あの時の自分はどんな顔をしていたのだろうか。
入室すると右手にベッドがあり左手にバスタブ、シャワー等の入浴設備があった。バスタブの前には噂に聞くスケベ椅子があり、いよいよ来てしまったのだなという心持ちになった。
僕「こういう店初めてでなんなら童貞なんです…」
嬢「え~そうなんだ お兄さんモテそうなのにね」
僕「あはは…」
嬢「おいくつなんですか?」
僕「25です…」
嬢「まだまだ若いんだからいけるよ~」
僕「まあ人間中身だからね…」
お世辞の言葉から日々もっと老いた客の相手をしていることが伺える。大変なんだろうな
PROLOGUE
タイマーがセットされると、嬢は僕の服を脱がし始めた。
為されるがままに僕は生まれたままの姿へと近づいていく。
ここでミス発覚。脱がされる過程でたまたま履いていた思いっきり「松茸」と書かれているパンツ(ドンキで買った)があらわになる。ちょけるつもりは全くなかったのに。
嬢「え…」
僕「あはは…適当に買ったやつです…」
嬢「男の人のパンツっていろんなのあって良いよね~」
外れ値だと思うよ。うん。
そんなパンツを下され全裸になる僕。
嬢「おけけないんだね」
僕「邪魔なんで剃ってます」
人に見せる前提で自分の体を扱っていないので、毛があるほうが一般的なのかそうでもないのかは分からない。聞けばよかったな
松茸パンツから松茸(陰茎)がまろび出たところで、嬢から嬢の服を脱がすよう促された。
いよいよ女体とのご対面というわけだ。
未だ震えが残る手でワンピースの背中のファスナーに手をかける。いわゆるバチバチなエロ下着的なものではなく、普通の下着が露になった。紫色ベースで装飾もあり、かわいいデザインだなとシンプルに思った。
お次は下着。後ろホックのブラジャーに手をかける。箸でブラジャーを外す人数のギネス記録があったななどとどうでもいいことを思い出しながら外した。
顕現するおっぱい。プロフィール上はEカップとの記述があった。
僕「おお 本物だ」
嬢は微笑んでいた。画像では見たことがあるが本物はまあ初めてだ。
続いてパンツを下ろす。
「恥丘は青かった」とでも言いたいが、いわゆるパイパンが僕の前に顕現した。
パイパンの語源は白發中の白らしい。白と違ってこちらにはスジがあるが。
僕「体きれいだね~」
嬢「これでもちょっと太ったんだよ」
沈黙を恐れる僕は褒め殺しで場を繋ぐことしかできない。形から入ることでしか体を成せない自分の情けなさから目を逸らし続けるのだ。
全裸になった状態でもまたハグをした。嬢の乳首が体に当たるのがくすぐったい。ひとしきり抱擁を交わしたのち風呂へ案内された。
こういうお店だからだろうが、衛生面は結構気をつけられているようで、シャワーを浴びる前にお互いうがい薬でうがいをした。一回うがいをしたところ、嬢から「もう一回できる?」と言われた。煙草で口が臭かったんだろうか。申し訳なさを感じながらうがいを2回した。
スケベ椅子に座した僕の体を嬢は手際よく洗っていく。ちょいちょいジャブのような艶めかしめの触り方をしながら。
人に体を洗ってもらうなんて子供の時以来だねなどと会話をし、体を流された。
ここで気づいたが、肩から上がまったく濡れていない。慣れているのもあるだろうが、これって結構技術がいるのではないのだろうかと思った。
うがいに加え歯磨きも済ませた僕はバスタブに入るよう促された。
嬢と二人でバスタブにつかる僕。
嬢「ちゅーしたことある?」
僕「ない…」
嬢「じゃあ、ファーストキスだね。責任重大だ」
ああ、確かに。それ以前の問題すぎて気にも留めたことはなかったが、そういうのしたことなかったな…
遠い目をしながら僕は嬢と唇を重ね合わせた。
柔らかい。
接吻の音とBGMのみが聞こえる中目を閉じ感覚を研ぎ澄ませながらその感覚を堪能した。
嬢「舌、出してみて」
僕「ん…」
いわゆるディープキス的なやつだ。
嬢と舌先を絡める。
時間が止まったような感覚だった。
続いて、僕の陰茎を艶めかしくまさぐり、股座に嬢の顔が寄る。
フェラだ。しゃぶられるみたいだ。これから。
未知の接近に僕は固唾を飲む。
嬢が僕のおちんちんを咥える。なんだこの感覚は。
吸われている。
舐められている。
僕はその技巧を全身全霊で受け止めるべくすべての意識のリソースを下半身へと集中させる。一切の雑念を排除し、すべての神経を…
…あれ?
暗雲
嬢「おちんちんは緊張気味かな~」
僕「どうなんだろ…」
嬢「とりあえずお風呂でよっか」
僕「はい…」
嬢に体を拭かれ、僕は戦地たるベッドへと案内された。
ベッドに仰向けに横たわるよう促される僕。
嬢が僕の横に寝そべる。
いよいよ始まるのだな、と言った感じだ。
嬢「おっぱい揉んでみて」
開戦の火蓋が切られた。
おっぱいに対するファーストタッチの感想は、柔らかいに尽きた。表面は意外と平面的なんだなと感じた。
Eカップが大きさとして上位何パーセントに入っているのかは分からないけど、とりあえずおっぱいかくありき、ということを触感として知ることは出来た。
嬢「舐めてみて」
おお、マジか
想定外の指示に若干狼狽えつつも、とりあえずパクッと行く。
…苦しい…呼吸が…
圧がスゴい。圧が…
とりあえず為されるがままにしていたがちょっと苦しかった。
「男の子はみんなおっぱいが好き」という定説はよく聞くが、実物をここまで体験した上で、僕にはこの定説が当てはまらないことが判明した。
次に嬢は僕の乳首を舐めながら手コキをした。くすぐったい。時折身体を捩らせる僕を見て嬢は微笑んだ。感覚としては足の裏をくすぐられたような感覚でチンポ方向には行かなかった。向いてないのか、それとも練習を要するものなのかは分からないが…
お気づきの方もいるだろうが、今のところ僕の息子が反応をしていない。数十分の触れ合い(と呼んでいいのか?)により緊張は解けていたため、精神的な要因はクリアされている。
しかし、息子の応答がない。
今のところの前段(と呼んでいいのだろうか)で僕の息子は1度も起き上がっていない。雑念はほとんど排除され、僕は今目の前で起きている”コト”以外に意識は向いていない。
しばらくしたらきっと起き上がってくれるとベッド・インの時点では想定していた。
嬢はここから様々な技法を用いて僕の息子を扱いた。
キスしながら、ローションを使いながら、時折フェラしたり、扱きそのものを僕がやったり、はたまたゴムをつけてみたり…
しかしながら、息子に応答はない。
強めに扱いてもらったりもしたが、フニャフニャだ。
数十分にわたりフニャフニャな僕の息子を扱き続ける嬢。時折「うーん…」と呟きながら懸命に僕の息子を扱き続けた。反応をしない息子を扱き続けるその姿はさながら救命医である。AEDを使い胸骨圧迫をし、人工呼吸をしても反応が無い。死だ。黒のトリアージタグがつけられ霊安室に運ばれるのみだ。
天面に鏡がついていたため視線をまっすぐにすると自分の体の上で蘇生が行われている景色と虚空を見つめる自分の顔が目に入る。
BGMと淫靡な音のみに支配されるその時間がどれほど続いたかは思い出せないが、僕にとっては永遠とも取れるような長さだった。
全然関係ないけど部屋のBGMでゴーストルールがたまたま流れていたのであの曲は今後alpcon手コキのテーマソングになってしまいそうです(好きな人ごめん)
時間が迫っていることに嬢が気づく。
嬢「せっかくだから素股してあげるよ」
素股って単語が飛び出てきたのが想定外だったがこれが最善の選択なのだろう。勃ってないんだもん。
嬢が僕の上に跨る。騎乗位だ。
騎乗位の体制でおまたを僕の息子に擦り続ける。
…圧迫感。
グリグリされてる感じだ。これ、多分勃ってたら割といい感じなのかもしれないけど、残念ながらこの時の息子はフニフニだ。
繭を作りその役目を終え茹でられる蚕の如く僕の息子は嬢の股間の下で沈黙を続けた。
急転
嬢「うーん…やっぱり緊張しちゃってたかな…」
僕「あぅ…そうなのかな…」
嬢からしたら疲れるだろう。
だって彼女はずっと僕の息子を扱いている。手の負担が相当だろう。趣味柄指や手を使うゲームをしているが、やり続けていたら当然疲れで何も出来なくなる。
きっと彼女はタイムアップを待ち望んでいたことだろう。そしてその時は迫っていた。
ここで1度自分を省みてみた。
分からないことだらけとはいえ、自らの意思で動いていなくないか?と。
今までの工程を振り返り、通しで1点だけやれていないことがある。
穴
穴の感覚を俺は知らなくないか?
触ってみなくていいのか?
求めよ、さらば与えられん
Ask, and it will be given to you.
いざ尋常に。
常に何かをぶら下げている身からすると、「あるべきものがなく別の機構がついている」エリアはミステリアスであり最も興を引く部分かもしれない。
恐る恐る嬢の股に手を伸ばす。
いきなり触るのも無礼だろうと踏み、少しずつ恥丘をまさぐり触る意志を示す。
そしてその深淵へと指を運ぶ。指だけだ。
刹那、脳に電撃が走る。
この感覚は。
今まで触れたどの部位でも感じたことのないその感覚。
混み上がる衝動。
分からない。この感情は?
沈黙を貫いていた彼が口を開く。
「世界はそれを性欲と呼ぶんだぜ」
視線を下腹部に向けると、そこには天を仰ぎいきり立つ息子の姿。
僅か数分の出来事だ。
自らの感情に狼狽る僕と裏腹に息子は急に元気を取り戻した。
最早僕の脳から別離した何かはそのボルテージを急激に上げている。
驚きでしかない。
なぜ?
穴の中を触っただけなのに、何故か僕の息子はビッキビキになっていた。
興奮より驚きが大きすぎて、正直言って混乱した。
頭と体が一致しない。たぶん、これが本能からくる性欲なんだろうと自覚した。
止まらぬ手コキ。
高まるボルテージ。
自分でも何が起きているのか分からない。
その時は急に来た。
僕「え?」
息子「ドリュリュリュリュリュリュリュ」
タイマー「ppppppppppppppppppppppp」
僕、いや、僕のおちんちんは”ナカ”の”触感”のみで射精(は)てた。しかも、タイマーと同時に。
嬢「え!タイマー止めようとしたら出ちゃってたね」
僕「ブザービートっすね」
嬢「もっと早く触ってもらえば良かった~」
僕「まあしょうがないね~」
嬢「とりあえず身体拭くね」
やったのか…?やれたのか…?僕が?
ジワジワと状況を飲み込み始めた僕は、そのあまりにも意外すぎる結末を受け止めた。
EPILOGUE
精液まみれになった僕の胸をティッシュで拭い、シャワーを浴びるよう促された。
僕の心は達成感に満たされていた。
少なくとも女体の一要素に触れ、その感触に僕の身体は(自認出来ていたかは別として)興奮し射精した。この1点だけは事実だったからだ。
”ソープに来て挿れずに帰る”という事実だけを切り抜いてしまうと世間一般の基準からしたら失敗談として片付けられてしまうかもしれない。しかし、僕の中では花丸の経験だ。身体は正直に女体に興奮し出すものを出している。その事実は僕にとって大きな一歩なのだ。
僕「ありがとう、ありがとう」
嬢「そう言ってもらえて良かったよ~これはリベンジだね」
僕「この経験だけでも人としてのコマをひとつ進められたような気がするよ…」
何言ってんだこの人 マジで。
達成感に満たされた僕は浮かれながらひたすら感謝をしていた。
もし仮に本人がこの文章に辿り着いて読んでいたら、などという天文学的な確率の話をするのは非常に無粋だが、あの時のあの客は心底満足していたのだということは本心だと説明しておきたい。僕の中では満足していた。
僕はこの上なく晴れやかな顔をしながら嬢と談笑した。
身の上話を振られながらシャワーを浴び、服を着る。
心なしか身体が軽くなったような感じもした。生まれたての小鹿のように震えながら入室した僕は羽が生えたような心持ちで嬢が服を着るその様子を見守った。
最後にベッドの上でキスをされ、手を引かれ部屋を後にした。
階段の踊り場まで見送って貰い、僕の初風俗は幕を閉じた。
かくして、”ソープに行き童貞を卒業せずに射精をした”人間が誕生した。
「性行為で興奮できない人間が風俗に行くとどうなるのか?」という問いに対する答えは以下になる。
”様々な手法でちんちんを扱かれても勃たなかったが、穴の内部をまさぐったら何故か射精した”
いや、お前がイクんか~い🤣👆
後編(振り返り編)に続く